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決算書(決算報告書)と法人税申告書(確定申告書)の関係(つながり)

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会計はなんとなく理解できるけど、税務はさっぱりわからないという方もいらっしゃるのではないかと思います。

企業会計は一般向けの書籍も多く出版されていますし、雑誌などでも特集されていますが、
企業税務はそういったものはあまりないですね。

また、当サイト「株式総務」は、株式に関する総務の業務を解説しているウェブサイトですが、株式総務ご担当の方は、会社法や金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)を扱うので、会計に関する書類(会社法上の財務諸表や、金商法上の財務諸表。)には慣れているかもしれませんが、やはり、税務に関する書類はなかなか縁遠いですよね。

当サイト「株式総務」の運営者も、企業財務に疎い株式総務担当者の一人です。
ただ、最低限、決算書(決算報告書)と法人税申告書(確定申告書)の関係(つながり)を理解しておくと、経理部門ともコミュニケーションがとりやすいと思います。

当記事では、決算書(決算報告書)と法人税申告書(確定申告書)の関係(つながり)についてご説明します。

決算書は何種類ある?いくつある?

上記の記事もご参照ください。




決算書(決算報告書)と法人税申告書(確定申告書)の関係(つながり)

法人税申告書の概要

法人は、事業年度末日の翌日から2ヵ月以内に、税務署長に対し、決算に基づき申告書(法人税申告書、確定申告書)を提出しなければなりません。

法人税申告書には、所得(または欠損。)の金額、法人税の額等を記載する必要があります。

法人税法申告書の記載事項の記載については、法人税法施行規則の別表の書式により、作成しなければなりません。

別表はたくさんありますが、おおざっぱに理解するためには(決算書(決算報告書)と法人税申告書(確定申告書)の関係(つながり)を理解するためには、)、別表一と別表四だけ確認すれば大丈夫です。

[手続名]法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁

会計上の利益の確認(まず決算書(決算報告書)から始まる。)

決算書は何種類ある?いくつある?でもご説明したように、決算は一つであるものの、法令(会社法、金商法、法人税法、等。)に応じて、微妙に異なる決算書を作成することとなります。

法人税申告書への添付が求められる決算書は、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書です。

上記の決算書は、総称して、決算報告書と呼ばれることが多いです。
(ただし、会社法上の決算書である計算書類や、金商法上の決算書である財務諸表と違い、
法定の名称ではありません。)

また、計算書類や財務諸表と異なり、決算報告書は、必ず1円単位で作成されることとなります(法人税が1円単位で計算されるため。)。

この決算報告書を用いて、法人税申告書を作成する(つまり、法人税を算出する。)こととなります。

課税所得の計算(会計上の利益・損失と法人税法上の所得・欠損。)

会計上の利益・損失と法人税法上の所得・欠損、
会計上の売上(収益)・費用(損失)と法人税法上の益金・損金は異なるものである、とご存じの方も多いと思います。

法人税法上の所得は、課税所得とも言われます。

また、「損金不算入」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。
例えば、交際費が法人税法上の限度額を超えていた場合、会計上では費用になるが、法人税法上では損金とならない、といったことを示す言葉です。

このような差異があるため、会計上の利益・損失から、法人税法上の所得・欠損を計算する必要があります。
その計算の際に、法人税申告書別表4を用いることになります。

別表4所得の金額の計算に関する明細書(令和2年4月1日以後終了事業年度分)(国税庁)

法人税の計算

課税所得が計算出来たら、次は法人税を計算することとなります。

特例に該当しなければ、課税所得の金額に、法人税率23.20%を乗じると、法人税額が算出されます。
その計算の際に、法人税申告書別表1を用いることになります。
「別表1」となっていますが、これが一枚目であり、更に「本表」等があるわけではありません。

No.5759 法人税の税率|国税庁

別表1各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(令和2年4月1日以後終了事業年度分)(国税庁)
別表1各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(次葉)(令和2年4月1日以後終了事業年度分)(国税庁)

その他、上記でご説明した以外の事項に関する金額を法人税申告書の各別表を用いて加減し、法人税申告書が完成することとなります。

決算書上の法人税

上記の通り計算された法人税が、決算書にも反映されることになります。
貸借対照表では「未払法人税等」の科目に、
損益計算書では「法人税、住民税、事業税」の科目に反映されることになります。
(実務的には、決算作業完了後に確定申告が始まるため、必ずしも決算書への反映が間に合うわけではありません。)

補足

株式総務ご担当者の方向けの補足ですが、確定申告書の添付書類となる「事業等の概況に関する書類」は、会社法上の事業報告が用いられることが多いようです。

法人税法及び関連法令の定め

最後に、参考までに、上記の内容に関する法人税法及び関連法令の定めを引用します。
着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。

(確定申告)
第七十四条 内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
一 当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額
二 前号に掲げる所得の金額につき前節(税額の計算)の規定を適用して計算した法人税の額
三 第六十八条及び第六十九条(所得税額等の控除)の規定による控除をされるべき金額で前号に掲げる法人税の額の計算上控除しきれなかつたものがある場合には、その控除しきれなかつた金額
四 その内国法人が当該事業年度につき中間申告書を提出した法人である場合には、第二号に掲げる法人税の額から当該申告書に係る中間納付額を控除した金額
五 前号に規定する中間納付額で同号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつたものがある場合には、その控除しきれなかつた金額
六 前各号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項
2 清算中の内国法人につきその残余財産が確定した場合には、当該内国法人の当該残余財産の確定の日の属する事業年度に係る前項の規定の適用については、同項中「二月以内」とあるのは、「一月以内(当該翌日から一月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日まで)」とする。
3 第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない。

法人税法

(確定申告書の記載事項)
第三十四条 法第七十四条第一項第六号(確定申告)に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 内国法人の名称、納税地及び法人番号並びにその納税地と本店又は主たる事務所の所在地とが異なる場合には、その本店又は主たる事務所の所在地
二 代表者の氏名
三 当該事業年度の開始及び終了の日
四 当該事業年度が残余財産の確定の日の属する事業年度である場合において、当該事業年度終了の日の翌日から一月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われるときは、その分配又は引渡しが行われる日
五 法第八十条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定により還付の請求をする法人税の額
六 その他参考となるべき事項
2 確定申告書(当該申告書に係る修正申告書及び更正請求書を含む。)の記載事項及びこれに添付すべき書類の記載事項のうち別表一(一)から別表一(三)まで、別表二から別表三(七)まで、別表四、別表五(一)から別表五(二)まで、別表五の二(一)付表二、別表六(一)から別表六(三十一)まで、別表七(一)から別表七(三)まで、別表八(一)、別表八(二)、別表九(一)から別表十(十)まで、別表十一(一)から別表十四(八)まで、別表十五及び別表十六(一)から別表十七(四)まで(更正請求書にあつては、別表一(一)から別表一(三)までを除く。)に定めるものの記載については、これらの表の書式によらなければならない。ただし、内国法人が令第六十三条第二項(減価償却に関する明細書の添付)又は第六十七条第二項(繰延資産の償却に関する明細書の添付)の規定の適用を受ける場合には、これらの規定に規定する明細書については、別表十六(一)から別表十六(六)までに定める書式に代え、当該書式と異なる書式(これらの表の書式に定める項目を記載しているものに限る。)によることができるものとする。

確定申告書の添付書類
第三十五条 法第七十四条第三項(確定申告)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの(当該各号に掲げるものが電磁的記録で作成され、又は当該各号に掲げるものの作成に代えて当該各号に掲げるものに記載すべき情報を記録した電磁的記録の作成がされている場合には、これらの電磁的記録に記録された情報の内容を記載した書類)とする。
一 当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書
二 当該事業年度の株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書又は損益金の処分表(これらの書類又は前号に掲げる書類に次に掲げる事項の記載がない場合には、その記載をした書類を含む。)
イ 当該事業年度終了の日の翌日から当該事業年度に係る決算の確定の日までの間に行われた剰余金の処分の内容
ロ 過年度事項(当該事業年度前の事業年度又は連結事業年度の貸借対照表、損益計算書又は株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書若しくは損益金の処分表に表示すべき事項をいう。)の修正の内容
三 第一号に掲げるものに係る勘定科目内訳明細書
四 当該内国法人の事業等の概況に関する書類(当該内国法人との間に完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む。)
五 組織再編成(合併、分割、現物出資又は法第二条第十二号の五の二(定義)に規定する現物分配(次号において「現物分配」という。)をいう。次号において同じ。)に係る合併契約書、分割契約書、分割計画書その他これらに類するものの写し
六 組織再編成により当該組織再編成に係る合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人その他の株主等に移転した資産若しくは負債その他主要な事項又は当該組織再編成(現物分配にあつては、適格現物分配に限る。)に係る被合併法人、分割法人、現物出資法人若しくは現物分配法人から移転を受けた資産若しくは負債その他主要な事項に関する明細書

(略)

別表四 所得の金額の計算に関する明細書
別表四 記載要領
(略)
2 「当期利益又は当期欠損の額 (1)」の欄は、損益計算書に掲げた当期利益の額又は当期欠損の額(当期利益の額又は当期欠損の額のうちに前事業年度から繰り越された利益の額又は欠損の額を含むときは、前事業年度から繰り越された利益の額又は欠損の額を控除した金額)を記載すること。

法人税法施行規則

まとめ

決算書と法人税申告書のつながりがご理解いただけましたでしょうか。

決算書(会計上の利益)→課税所得(法人税法上の所得)の計算→法人税額の計算→決算書(税金に関する勘定科目)というつながりになっています。

決算書は何種類ある?いくつある?

上記の記事もご参照ください。

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名前:
火星に似たもの

職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。