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会社法

役員とは?社長、会長、常務、専務、取締役、監査役、執行役、執行役員は含まれる?

投稿日:2020年7月29日 更新日:

「○○の件について、役員全員にメールしといて!」と言われた時、誰にメールを送ればいいかわからず、困ったことはありませんか?
当記事では、役員という言葉が指す対象について、法令の定めも参照しながら、ご説明します。





役員とは?社長、副社長、会長、常務、専務、頭取、取締役、監査役、執行役、執行役員は含まれる?

法令上の役員か、社内用語としての役員か。

まず、役員という言葉は、法令上の定め(会社法上の定め。)があるにもかかわらず、一般的に、社内用語として、会社法上の定めより広い意味でつかわれることが多いです。

対象者が「役員」となる業務について指示された時は、まず、その指示者の指す「役員」という言葉が、法令上の役員(つまり会社法上の役員。)か、社内用語としての役員か、確認するようにしましょう。

「株主総会招集通知に役員の経歴を記載してください。」と指示されれば、おそらく、会社法上の役員を指している可能性が高いです。

一方で、「○○の件について、役員全員にメールしといて!」と指示された時は、社内用語としての役員である可能性も高そうです。

役員という言葉の指す範囲について、文脈で判断しつつも、わからなかったら聞いてしまうのが確実です。

法令上の役員(会社法上の役員)

役員について、会社法上は以下の通り定められています。
取締役、会計参与、監査役のみです。

第三節 役員及び会計監査人の選任及び解任
第一款 選任
(選任)
第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
(略)

会社法

社内用語としての役員

社内用語としての役員には、取締役、会計参与、監査役以外も含まれる可能性有り!

社内用語としての役員には、取締役、会計参与、監査役ではない方も含まれている可能性があります。
例えば、以下のような事例です。

社長、頭取、副社長

会社法上の定義はありませんが、会社のトップは一般的に社長と呼ばれることが多いです(その会社が銀行であれば、頭取と呼ばれることが多いです)。

また、№2のポジションは副社長と呼ばれることが多いです。

これらの役職も、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない社長、頭取、副社長は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。

会長

会社法上の定義はありませんが、執行側のトップとしての社長とは別の人物を、取締役会の議長に置く場合、会長という役職名が使われることが多いです。
社長が退任後に会長に就任することも多いです。

当然、会長という名がつけば、取締役会の議長であること(つまり取締役であること。)を想定するのですが、もし、会長が取締役を兼務しない場合は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。

専務、常務

会社法上の定義はありませんが、社長・副社長に次ぐポジションを一般的に、専務・常務ということが多いです。

こちらも同じく、取締役を兼務(取締役専務、取締役常務、等。)していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない専務、常務は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。

執行役員

会社法上の定義はありませんが、取締役であろうがなかろうが、また、役付き(社長、副社長、専務、常務。)であろうがなかろうが、一般的に執行側の偉い人を執行役員と呼ぶことが多いです。

こちらも同じく、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない執行役員は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。

以下に例を列挙します。
取締役執行役員は、会社法上も役員ですが、
(取締役ではない)専務執行役員は、会社法上は役員ではないのです。

・会社法上の役員
取締役専務執行役員
取締役常務執行役員
取締役執行役員

・会社情報の役員ではない
専務執行役員
常務執行役員
執行役員

執行役

執行役員とよく似た呼称として、執行役という役職名があります。

これまでご紹介した社長等と違い、会社法上の定義はあるのですが、会社法上の役員ではありません。

会社法に定める株式会社は、いくつかある機関設計のうち一つを選択することができますが、執行役は、指名委員会等設置会社という機関設計を選択した場合、選任しなければならない役職です。
指名委員会等設置会社以外の機関設計(例えば、監査役会設置会社。)における、業務執行取締役に相当する役職です。

おそらく、株主総会ではなく、取締役会で選任されるため、会社法上の役員ではないものと思われます。

こちらも同じく、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない執行役は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。

(執行役の選任等)
第四百二条 指名委員会等設置会社には、一人又は二人以上の執行役を置かなければならない。
2 執行役は、取締役会の決議によって選任する。
(略)

会社法

まとめ

役員という言葉は、会社法上の定めがあるにもかかわらず、一般的に、社内用語として、会社法上の定めより広い意味でつかわれることが多いです。

会社内で役員という言葉が使われた場合、役員という言葉の指す範囲について、文脈で判断しつつも、わからなかったら聞いてしまうのが確実です。

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とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。