「○○の件について、役員全員にメールしといて!」と言われた時、誰にメールを送ればいいかわからず、困ったことはありませんか?
当記事では、役員という言葉が指す対象について、法令の定めも参照しながら、ご説明します。
目次
役員とは?社長、副社長、会長、常務、専務、頭取、取締役、監査役、執行役、執行役員は含まれる?
法令上の役員か、社内用語としての役員か。
まず、役員という言葉は、法令上の定め(会社法上の定め。)があるにもかかわらず、一般的に、社内用語として、会社法上の定めより広い意味でつかわれることが多いです。
対象者が「役員」となる業務について指示された時は、まず、その指示者の指す「役員」という言葉が、法令上の役員(つまり会社法上の役員。)か、社内用語としての役員か、確認するようにしましょう。
「株主総会招集通知に役員の経歴を記載してください。」と指示されれば、おそらく、会社法上の役員を指している可能性が高いです。
一方で、「○○の件について、役員全員にメールしといて!」と指示された時は、社内用語としての役員である可能性も高そうです。
役員という言葉の指す範囲について、文脈で判断しつつも、わからなかったら聞いてしまうのが確実です。
法令上の役員(会社法上の役員)
役員について、会社法上は以下の通り定められています。
取締役、会計参与、監査役のみです。
第三節 役員及び会計監査人の選任及び解任
第一款 選任
(選任)
第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
(略)
社内用語としての役員
社内用語としての役員には、取締役、会計参与、監査役以外も含まれる可能性有り!
社内用語としての役員には、取締役、会計参与、監査役ではない方も含まれている可能性があります。
例えば、以下のような事例です。
社長、頭取、副社長
会社法上の定義はありませんが、会社のトップは一般的に社長と呼ばれることが多いです(その会社が銀行であれば、頭取と呼ばれることが多いです)。
また、№2のポジションは副社長と呼ばれることが多いです。
これらの役職も、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない社長、頭取、副社長は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。
会長
会社法上の定義はありませんが、執行側のトップとしての社長とは別の人物を、取締役会の議長に置く場合、会長という役職名が使われることが多いです。
社長が退任後に会長に就任することも多いです。
当然、会長という名がつけば、取締役会の議長であること(つまり取締役であること。)を想定するのですが、もし、会長が取締役を兼務しない場合は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。
専務、常務
会社法上の定義はありませんが、社長・副社長に次ぐポジションを一般的に、専務・常務ということが多いです。
こちらも同じく、取締役を兼務(取締役専務、取締役常務、等。)していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない専務、常務は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。
執行役員
会社法上の定義はありませんが、取締役であろうがなかろうが、また、役付き(社長、副社長、専務、常務。)であろうがなかろうが、一般的に執行側の偉い人を執行役員と呼ぶことが多いです。
こちらも同じく、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない執行役員は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。
以下に例を列挙します。
取締役執行役員は、会社法上も役員ですが、
(取締役ではない)専務執行役員は、会社法上は役員ではないのです。
・会社法上の役員
取締役専務執行役員
取締役常務執行役員
取締役執行役員
・会社情報の役員ではない
専務執行役員
常務執行役員
執行役員
執行役
執行役員とよく似た呼称として、執行役という役職名があります。
これまでご紹介した社長等と違い、会社法上の定義はあるのですが、会社法上の役員ではありません。
会社法に定める株式会社は、いくつかある機関設計のうち一つを選択することができますが、執行役は、指名委員会等設置会社という機関設計を選択した場合、選任しなければならない役職です。
指名委員会等設置会社以外の機関設計(例えば、監査役会設置会社。)における、業務執行取締役に相当する役職です。
おそらく、株主総会ではなく、取締役会で選任されるため、会社法上の役員ではないものと思われます。
こちらも同じく、取締役を兼務していれば会社法上の役員ですが、取締役を兼務しない執行役は、会社法上は役員ではないのです。
ただし、社内的には役員として扱われるものと思います。
(執行役の選任等)
第四百二条 指名委員会等設置会社には、一人又は二人以上の執行役を置かなければならない。
2 執行役は、取締役会の決議によって選任する。
(略)
まとめ
役員という言葉は、会社法上の定めがあるにもかかわらず、一般的に、社内用語として、会社法上の定めより広い意味でつかわれることが多いです。
会社内で役員という言葉が使われた場合、役員という言葉の指す範囲について、文脈で判断しつつも、わからなかったら聞いてしまうのが確実です。