会社法上で作成が義務付けられている書類として、「事業報告に係る附属明細書」及び「計算書類に係る附属明細書」があります。
これらの附属明細書を作成している際、「附属明細書は株主総会の招集通知への添付が必要か不要か」「附属明細書は株主総会への提出は必要か不要か(株主総会の提出書類かそうでないか)」、「附属明細書の開示は必要か不要か(開示義務があるのかないのか)」、「連結計算書類に係る附属明細書はあるかないか(連結計算書類に附属明細書は必要か不要か)」と気になったことはありませんか?
当記事では、附属明細書について、上記の事項を確認したいと思います。
目次
会社法上の附属明細書(事業報告、計算書類)の開示の必要性、株主総会への提出義務の有無等を解説。
会社法上、「しなくてよいこと」はあまり書かれていない。
「はじめに」で記載したことは、すべて不要なことなのですが、会社法上、「○○しなくてよい」と定められていることはあまりありません。
そこで、ここからは、何をしなければいけないかを確認したいと思います。
附属明細書の作成義務
まず、会社法上、附属明細書の作成義務は以下のとおり定められています。
(計算書類等の作成及び保存)
第四百三十五条(略)
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
附属明細書の株主総会の招集通知への添付は不要
上記の作成義務と違い、以下の通り、株主総会招集通知への添付書類として附属明細書は含まれていません。
そのため、株主総会招集通知への添付(株主への発送)は不要です。
(計算書類等の株主への提供)
第四百三十七条 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
附属明細書の株主総会への提出は不要
こちらも同じく、上記の作成義務と違い、以下の通り、株主総会招への提出書類として附属明細書は含まれていません。
そのため、株主総会への提出は不要です。
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第四百三十八条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
一 第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三 取締役会設置会社 第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四 前三号に掲げるもの以外の株式会社 第四百三十五条第二項の計算書類及び事業報告
附属明細書の開示(公衆縦覧)は不要
ここでは、東京証券取引所(以下「東証といいます。」)に上場している会社を前提に解説します。
東証では、以下の通り、株主に対して発送する書類を開示する(正確には、公衆の縦覧に供する。)と定めています。
上記の通り、附属明細書の株主総会招集通知への添付(株主への発送)は不要ですので、附属明細書の開示も不要ということになります。
(書類の提出等)
第421条
上場会社は、施行規則で定めるところにより、当取引所に対して書類の提出等を行うものとする。
2 上場会社は、前項のほか、当取引所が正当な理由に基づき請求する書類を遅滞なく提出するものとし、当該書類のうち当取引所が必要と認める書類について当取引所が公衆の縦覧に供することに同意するものとする。
(株主に発送する書類の提出)
第420条
上場内国会社は、株主に対して株主総会招集通知書及びその添付書類を発送する場合(会社法施行規則第94条第1項、同規則第133条第3項、会社計算規則(平成18年法務省令第13号)第133条第4項又は同規則第134条第4項の規定によって株主に対して提供したものとみなされる場合を含む。以下この項において同じ。)には、発送する書類をその発送日までに当取引所に提出するものとする。この場合において、上場内国会社は、当該書類の内容を記録した電磁的記録の提出により行うものとし、当該書類を当取引所が公衆の縦覧に供することに同意するものとする。
連結計算書類に附属明細書は不要
以下の通り、連結計算書類には附属明細書を作成せよとは書かれていません。
上記の「附属明細書の作成義務」と比較して読んでいただけると、より分かりやすいと思います。
第四百四十四条 会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類(当該会計監査人設置会社及びその子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を作成することができる。
注意事項
「附属明細書」の表記が正しいです。
「付属明細書」と記載しないよう、ご注意ください。
また、有価証券報告書の「経理の状況」における「連結附属明細表」及び「附属明細表」とも異なりますので、こちらも混同されないよう、ご注意ください。
まとめ
附属明細書は、「株主総会招集通知への添付」、「株主総会への提出」、「開示」のいずれも不要です。
また、連結計算書類には、附属明細書は不要です。