「監査報告書の種類は?全部でいくつある?決算短信には不要?」をご覧いただいた際、「会社法上は監査役による計算書類や連結計算書類の監査が必要みたいだけど、うちの会社の監査役は計算書類や連結計算書類の監査はやってないかも。」とお思いになったかもしれません。
当記事では、監査役による計算書類や連結計算書類の監査の必要性について、確認したいと思います。
目次
監査役による計算書類や連結計算書類の監査は不要?
不要ではないが機関設計により違いがある。
結論としては、監査役による計算書類や連結計算書類の監査は不要ではないですが、機関設計により違いがあります。
具体的には、会計監査人設置会社か否かで、監査役の監査報告の内容に違いが生じます。
以下に、まず、会計監査人設置会社となる条件を確認し、続いて、会計監査人設置会社とそれ以外の場合の監査役の監査報告の内容について、確認したいと思います。
会計監査人設置会社となる条件
会計監査人設置会社となる条件について、会社法では以下のとおり定められています。
原則として任意であるものの、設置が義務である場合があります。
(株主総会以外の機関の設置)
第三百二十六条(略)
2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条(略)
5 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
(大会社における監査役会等の設置義務)
第三百二十八条 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
会計監査人設置会社の監査役の監査報告の内容
会計監査人設置会社の監査役は、赤文字部分(着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。)に記載の通り、計算関係書類については、「会計監査人の監査の方法又は結果」が相当であるか否かを監査(相当性判断)することとなっています。
(会計監査人設置会社の監査役の監査報告の内容)
第百二十七条 会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類及び会計監査報告(第百三十条第三項に規定する場合にあっては、計算関係書類)を受領したときは、次に掲げる事項(監査役会設置会社の監査役の監査報告にあっては、第一号から第五号までに掲げる事項)を内容とする監査報告を作成しなければならない。
一 監査役の監査の方法及びその内容
二 会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及びその理由(第百三十条第三項に規定する場合にあっては、会計監査報告を受領していない旨)
三 重要な後発事象(会計監査報告の内容となっているものを除く。)
四 会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項
五 監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由
六 監査報告を作成した日
会計監査人設置会社以外の会社の監査役の監査報告の内容
会計監査人設置会社以外の会社の監査役は、赤文字部分(着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。)に記載の通り、計算関係書類については、直接、会計監査をすることとなっています。
(監査役の監査報告の内容)
第百二十二条 監査役(会計監査人設置会社の監査役を除く。以下この章において同じ。)は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項(監査役会設置会社の監査役の監査報告にあっては、第一号から第四号までに掲げる事項)を内容とする監査報告を作成しなければならない。
一 監査役の監査の方法及びその内容
二 計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見
三 監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨及びその理由
四 追記情報
五 監査報告を作成した日
2 前項第四号に規定する「追記情報」とは、次に掲げる事項その他の事項のうち、監査役の判断に関して説明を付す必要がある事項又は計算関係書類の内容のうち強調する必要がある事項とする。
一 会計方針の変更
二 重要な偶発事象
三 重要な後発事象
(参考)計算関係書類の定義
上記の計算関係書類の定義は以下の通り定められています。
計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類を含んでいます。
(定義)
第二条3 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
三 計算関係書類 次に掲げるものをいう。
イ 成立の日における貸借対照表
ロ 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書
ハ 臨時計算書類
ニ 連結計算書類(以下略)
まとめ
監査役による計算書類や連結計算書類の監査は不要ではないですが、機関設計により違いがあります。
会計監査人設置会社の監査役は、計算書類や連結計算書類については、直接、会計監査をするのではなく、「会計監査人の監査の方法又は結果」が相当であるか否かを監査(相当性判断)することとなっています。