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有価証券報告書 金融商品取引法

有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)

投稿日:2020年5月17日 更新日:

有価証券報告書(以下「有報」といいます。)に関する会話の中で、「前段」という言葉を聞いたことはありませんか?

特に、会社で、有報の作成実務を担当されている方は、監査法人の公認会計士の方から、「有報の前段を見せてください。」などと言われたことはありませんか?

当記事では、有報の「前段」という言葉の意味について、解説したいと思います。




有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)

有価証券報告書の構成

前段という言葉をご説明する前に、有価証券報告書の構成を確認したいと思います。
そうすると、前段という言葉の意味もご理解いただくことが容易になるのでは、と思います。

表紙
第一部 企業情報
第1 企業の概況
第2 事業の状況
第3 設備の状況
第4 提出会社の状況
第5 経理の状況
第6 提出会社の株式事務の概要
第7 提出会社の参考情報
第二部 提出会社の保証会社等の情報
第1 保証会社情報
第2 保証会社以外の会社の情報
第3 指数等の情報

有価証券報告書の前段とは?

有価証券報告書の前段とは、経理の状況(財務諸表)より前の部分のことを指しています。
特に、監査法人の公認会計士の方が「有報の前段を見たい」というときは、「(自分たちが監査する)経理の状況(財務諸表)以外の部分を確認したい」という意味だと思われます。

有価証券報告書の後段はあるのか?

有価証券報告書の前段とは?を読んで疑問に思った方もいるかもしれません。

「経理の状況(財務諸表)より後ろの部分(「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分)はなんていうのかな?」
「後段というのかな?」
と思った方もいるかもしれません。

結論から言うと名前はないのです。
あるいは、「前段」という言葉に内包されていると思われます。

何故かというと、「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分はたいていの会社は、記載事項・ページ数が少なく、見た目にもとても薄いのです。
特に、社債を発行していないなど、保証会社がない会社が多く、そういった会社は極端に薄いです。

ですから、監査法人の公認会計士の方が「有報の前段を見たい」というときは、「(自分たちが監査する)経理の状況(財務諸表)以外の部分を確認したい」という意味であり、「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分も内包されているのです。

しかし、有報の作成実務担当者である当サイト「株式総務」の運営者としては、「有報の前段」という言い方に、異議あり!と言いたいと思っています。

有価証券報告書の非財務情報とは?

当サイト「株式総務」の運営者が勤務する会社では、有報の経理の状況(財務諸表)は経理部門が、有報のそれ以外の部分は総務部門が作成しています。
そして、当サイト「株式総務」の運営者は総務部門に所属しています。

「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分について、いくら記載事項・ページ数が少なく、見た目にもとても薄くとも、懸命に作っているのです。
前段と呼ばれて、存在が無視・軽視されるのは悲しい、と思っています。

現在、財務情報以外のディスクロージャー情報が、「非財務情報」と呼ばれることが増えてきました。
有報の経理の状況(財務諸表)以外の部分を、「有価証券報告書の非財務情報」と耳にすることも増えてきました。

非財務情報の塊である「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」への注目の高まりや、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示」の推進により、非財務情報の注目が高まっています。

今後、「非財務情報」という言葉がさらに人口に膾炙され、市民権を得て、「有報の前段」ではなく、「有報の非財務情報」と呼ばれるようになってほしいなと思っています。

(「企業の概況」の「主要な経営指標等の推移」(いわゆるハイライト情報)は財務情報ではないの?と問われると、またややこしくなってしまうのですが。)

まとめ

有報の経理の状況(財務諸表)以外の部分の作成実務担当者である当サイト「株式総務」の運営者としては、「有報の前段」ではなく、「有報の非財務情報」と呼ばれるようになってほしいなと思っています。

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-有価証券報告書, 金融商品取引法

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火星に似たもの

職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。