有価証券報告書(以下「有報」といいます。)に関する会話の中で、「前段」という言葉を聞いたことはありませんか?
特に、会社で、有報の作成実務を担当されている方は、監査法人の公認会計士の方から、「有報の前段を見せてください。」などと言われたことはありませんか?
当記事では、有報の「前段」という言葉の意味について、解説したいと思います。
目次
有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)
有価証券報告書の構成
前段という言葉をご説明する前に、有価証券報告書の構成を確認したいと思います。
そうすると、前段という言葉の意味もご理解いただくことが容易になるのでは、と思います。
表紙 | |
第一部 企業情報 | |
第1 企業の概況 | |
第2 事業の状況 | |
第3 設備の状況 | |
第4 提出会社の状況 | |
第5 経理の状況 | |
第6 提出会社の株式事務の概要 | |
第7 提出会社の参考情報 | |
第二部 提出会社の保証会社等の情報 | |
第1 保証会社情報 | |
第2 保証会社以外の会社の情報 | |
第3 指数等の情報 |
有価証券報告書の前段とは?
有価証券報告書の前段とは、経理の状況(財務諸表)より前の部分のことを指しています。
特に、監査法人の公認会計士の方が「有報の前段を見たい」というときは、「(自分たちが監査する)経理の状況(財務諸表)以外の部分を確認したい」という意味だと思われます。
有価証券報告書の後段はあるのか?
有価証券報告書の前段とは?を読んで疑問に思った方もいるかもしれません。
「経理の状況(財務諸表)より後ろの部分(「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分)はなんていうのかな?」
「後段というのかな?」
と思った方もいるかもしれません。
結論から言うと名前はないのです。
あるいは、「前段」という言葉に内包されていると思われます。
何故かというと、「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分はたいていの会社は、記載事項・ページ数が少なく、見た目にもとても薄いのです。
特に、社債を発行していないなど、保証会社がない会社が多く、そういった会社は極端に薄いです。
ですから、監査法人の公認会計士の方が「有報の前段を見たい」というときは、「(自分たちが監査する)経理の状況(財務諸表)以外の部分を確認したい」という意味であり、「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分も内包されているのです。
しかし、有報の作成実務担当者である当サイト「株式総務」の運営者としては、「有報の前段」という言い方に、異議あり!と言いたいと思っています。
有価証券報告書の非財務情報とは?
当サイト「株式総務」の運営者が勤務する会社では、有報の経理の状況(財務諸表)は経理部門が、有報のそれ以外の部分は総務部門が作成しています。
そして、当サイト「株式総務」の運営者は総務部門に所属しています。
「第6提出会社の株式事務の概要」以降の部分について、いくら記載事項・ページ数が少なく、見た目にもとても薄くとも、懸命に作っているのです。
前段と呼ばれて、存在が無視・軽視されるのは悲しい、と思っています。
現在、財務情報以外のディスクロージャー情報が、「非財務情報」と呼ばれることが増えてきました。
有報の経理の状況(財務諸表)以外の部分を、「有価証券報告書の非財務情報」と耳にすることも増えてきました。
非財務情報の塊である「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」への注目の高まりや、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示」の推進により、非財務情報の注目が高まっています。
今後、「非財務情報」という言葉がさらに人口に膾炙され、市民権を得て、「有報の前段」ではなく、「有報の非財務情報」と呼ばれるようになってほしいなと思っています。
(「企業の概況」の「主要な経営指標等の推移」(いわゆるハイライト情報)は財務情報ではないの?と問われると、またややこしくなってしまうのですが。)
まとめ
有報の経理の状況(財務諸表)以外の部分の作成実務担当者である当サイト「株式総務」の運営者としては、「有報の前段」ではなく、「有報の非財務情報」と呼ばれるようになってほしいなと思っています。