有価証券報告書(以下「有報」といいます。)の「役員の状況」欄を作成する際に、「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」という企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」といいます。)の文言を読み、接続詞が多すぎて、頭が痛くなった方はおられますでしょうか。
当記事では「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」の指す意味について説明します。
目次
「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」とは?
定義開示府令上の定め
開示府令上、以下の通り、有報において、「役員の状況」欄を記載するよう、定められています。
(55) 役員の状況
(略)
j 提出会社が上場会社等である場合には、次のとおり記載すること。
⒜ 社外取締役又は社外監査役を選任している場合には、社外取締役及び社外監査役の員数並びに各社外取締役及び社外監査役につき、提出会社との人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係について、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。当該社外取締役又は社外監査役が提出会社の企業統治において果たす機能及び役割、当該社外取締役又は社外監査役を選任するための提出会社からの独立性に関する基準又は方針の内容(これらの基準又は方針がない場合には、その旨)並びに当該社外取締役又は社外監査役の選任状況に関する提出会社の考え方を具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。また、当該社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会による監査、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会による監査をいう。(56)において同じ。)及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係について、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。
(略)
言葉を置き換えてみる。
「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」を記載しようにも長くてかつ接続詞が多すぎて、瞬間的には意味が読み取りづらいです。
まずは、言葉を置き換えてみましょう。
社外取締役及び社外監査役は、一般的に総称して社外役員といわれますので、「社外取締役又は社外監査役による」は、「社外役員による」と置き換えられます。
内部監査、監査役監査及び会計監査は、一般的に総称して三様監査といわれますので、「内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携」は、「三様監査との相互連携」と置き換えられます。
(三様監査については「三様監査とは?」もご参照ください。)
上記2点を置き換えると、
「社外役員による監督又は監査と三様監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」
となります。
少しは、意味が読み取りやすくなったでしょうか?
言葉を分解してみる。
まだ、意味が読み取りづらい場合は、言葉を分解してみましょう。
「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」という言葉は、大きく二つのブロックに分けられます。
「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査」という左側のブロックと、「内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」という右側のブロックです。
左側のブロックをさらに分解してみます。
社外取締役だけ取り上げましょう。
そうすると、「社外取締役による監督」という文言が抽出できます。
続いて、右側のブロックもさらに分解してみます。
こちらは、内部監査だけ取り上げましょう。
そうすると、「内部監査との相互連携」という文言が抽出できます。
また同じく、右側のブロックを分解してみます。
こちらは、内部統制部門だけ取り上げましょう。
そうすると、「内部統制部門との関係」という文言が抽出できます。
ここで、分解した左側のブロックと、分解した右側のブロックを、合成してみましょう。
「社外取締役による監督と内部監査との相互連携」
「社外取締役による監督と内部統制部門との関係」
これで容易に意味が読み取れるようになったのではないでしょうか?
ここまで読んで、勘の良い方ならお気づきかもしれませんが、「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」という文章は、以下の8つの文章が、接続詞により合成されているのです。
「社外取締役による監督と内部監査との相互連携」
「社外取締役による監督と監査役監査との相互連携」
「社外取締役による監督と会計監査との相互連携」
「社外取締役による監督と内部統制部門との関係」
「社外監査役による監査と内部監査との相互連携」
「社外監査役による監査と監査役監査との相互連携」
「社外監査役による監査と会計監査との相互連携」
「社外監査役による監査と内部統制部門との関係」
上記のように整理するとだいぶ意味が読み取りやすいと思いますが、いかがでしょうか?
「役員の状況欄」においては、以下の8つの状況に当てはまる社内の事象を記載すれば良いのです。
まとめ
有報の「役員の状況」欄に関して、「社外取締役又は社外監査役による監督又は監査と内部監査、監査役監査及び会計監査との相互連携並びに内部統制部門との関係」という開示府令の定めは、意味が読み取りづらいですが、分解して整理したら、簡単です!
有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)
三様監査とは?
上記の記事もぜひご参照ください。