金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)に基づき設立される自主規制法人についてご存じですか?
また、現状、唯一の自主規制法人である日本取引所自主規制法人についてご存じでしょうか?
当記事では、自主規制法人とは何か、その目的や、業務にどのようにかかわるか、ご説明します。
上記記事もご参照ください。
目次
自主規制法人とは?(日本取引所自主規制法人とは?)
自主規制とは?
東京証券取引所(以下「東証」といいます。)等の証券取引所を含む金融商品取引所は、市場を公正にし、投資者を保護するために、以下の自主規制業務を行わなければならないとされています。
(自主規制業務)
第八十四条 金融商品取引所は、この法律及び定款その他の規則に従い、取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護するため、自主規制業務を適切に行わなければならない。
2 前項の「自主規制業務」とは、金融商品取引所について行う次に掲げる業務をいう。
一 金融商品、金融指標又はオプション(以下この章において「金融商品等」という。)の上場及び上場廃止に関する業務(内閣府令で定めるものを除く。)
二 会員等の法令、法令に基づく行政官庁の処分若しくは定款その他の規則又は取引の信義則の遵守の状況の調査
三 その他取引所金融商品市場における取引の公正を確保するために必要な業務として内閣府令で定めるもの
(自主規制業務)
第七条 法第八十四条第二項第三号に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 会員等が行う取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引の内容の審査(取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を円滑にするため、これらの取引の状況について即時に行うものを除く。)
二 会員等の資格の審査
三 会員等に対する処分その他の措置に関する業務
四 上場する有価証券の発行者が行う当該発行者に係る情報の開示又は提供に関する審査及び上場する有価証券の発行者に対する処分その他の措置に関する業務
五 法第八十四条第二項第一号及び第二号に掲げる業務並びに前各号に掲げるもの(以下「特定自主規制業務」という。)に関する業務規程その他の規則(金融商品等の上場及び上場廃止に関する基準並びに会員等の資格の付与に関する基準を除く。)の作成、変更及び廃止
六 特定自主規制業務に関する定款の変更(金融商品等の上場及び上場廃止に関する基準並びに会員等の資格の付与に関する基準に関する定款の変更を除く。)に係る総会又は株主総会の議案の概要の作成
自主規制法人とは?
金融商品取引所のうち、法人の種類が株式会社の場合、株主価値を高めるために利益を最大化することが求められます。
利益最大化のためには、例えば、取引量を増やし、手数料収入を増やすことが考えられますが、取引量を増やすために、自主規制を怠り、上場審査・上場廃止審査を甘くするというインセンティブが働いてしまいます。
それを防ぐことを目的として、金融商品取引所とは別の法人として、自主規制法人を設けることが、以下の通り、認められています。
(自主規制業務の委託)
第八十五条 金融商品取引所は、内閣総理大臣の認可を受けて、自主規制法人(自主規制業務(前条第二項に規定する自主規制業務をいう。以下この章において同じ。)を行うことを目的として、次節第一款の二の規定に基づいて設立された法人をいう。以下この章において同じ。)に対し、当該金融商品取引所に係る自主規制業務の全部又は一部を委託することができる。(法人格)
第百二条の二 自主規制法人は、法人とする。
2 自主規制法人は、その名称のうちに自主規制法人という文字を用いなければならない。
3 自主規制法人でない者は、その名称のうちに自主規制法人であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。(発起人)
第百二条の三 自主規制法人は、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社又は親商品取引所等(金融商品取引所を子会社(第八十七条の三第三項に規定する子会社をいう。以下この項において同じ。)とする商品取引所(金融商品取引所であるものを除く。以下同じ。)又は金融商品取引所を子会社とする商品取引所持株会社(金融商品取引所持株会社であるものを除く。以下同じ。)をいう。以下この章において同じ。)でなければ、設立することができない。
2 自主規制法人を設立するには、会員になろうとする金融商品取引所、金融商品取引所持株会社又は親商品取引所等が発起人とならなければならない。
日本取引所自主規制法人とは?
実際に設立されている唯一の自主規制法人が、日本取引所自主規制法人です。
かつての名称は東京証券取引所自主規制法人です。
株式会社日本取引所グループのアニュアルレポート「JPXレポート 2019」によると、日本取引所自主規制法人の会員(出資者)は、株式会社日本取引所グループのみのようです。
(創立総会)
第百二条の五 発起人は、定款を作成した後、会員になろうとする者を募り、これを会議の日時及び場所とともにその会議開催日の二週間前までに公告して、創立総会を開かなければならない。
2 設立を予定する自主規制法人の会員となる予定の者(以下この条において「加入予定者」という。)は、創立総会の開会までに、出資の全額を払い込まなければならない。
3 定款の承認その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。
4 創立総会では、定款を修正することができる。
5 第三項の創立総会の議事は、加入予定者であつてその開会までに出資の全額の払込みをした者の二分の一以上が出席し、その出席者の議決権の三分の二以上で決する。
6 加入予定者で、自主規制法人の成立の時までに出資の全額を払い込まない者は、自主規制法人の成立の時に加入の申込みを取り消したものとみなす。(会員の資格)
第百二条の十二 自主規制法人の会員は、金融商品取引所、金融商品取引所持株会社及び親商品取引所等に限る。
日本取引所自主規制法人との業務上のかかわり
当サイト「株式総務」は、株式に関する総務の業務(以下「株式総務」といいます。)を解説するウェブサイトです。
日本取引所自主規制法人は、株式総務の業務に大いにかかわっています。
上場審査部は、新規上場を希望する会社の適格性を審査しています。
また、上場管理部は、上場会社が適格性を維持しているか(上場廃止基準に該当していないか)を審査しています。
インサイダー取引規制セミナーの開催を、日本取引所自主規制法人に申し込んだことがある株式総務ご担当の方もおられると思います。
まとめ
金融商品取引所は、投資家保護のため、自主規制業務を行わなければなりません。
また、金融商品取引所は、自主規制業務を自主規制法人という別の法人に委託することが認められています。
日本取引所自主規制法人は、唯一の自主規制法人です。