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有価証券報告書や決算短信の取締役会決議は必要?不要?

投稿日:2020年7月12日 更新日:

会社法の書類(株主総会招集通知、事業報告、計算書類)は、取締役会で決議しているけど、有価証券報告書や決算短信は取締役会で決議しなくていいのかな?と思ったことはありますか?

あるいは、会社法の書類(株主総会招集通知、事業報告、計算書類)を取締役会で決議する根拠は知っているけど、有価証券報告書や決算短信は取締役会で決議しなくていいのかな?と思ったことはありますか?

当記事では、有価証券報告書や決算短信の取締役会決議の必要性についてご説明します。





有価証券報告書や決算短信の取締役会決議は必要?不要?

法令の定め

まず法令の定めを確認してみる。

法令上、取締役会決議が求められていれば、当然ですが、必ず取締役会で決議しなければなりません。
会社法の書類も含めて確認してみます。

会社法の書類

以下の通り、会社法にて、会社法の書類(株主総会招集通知、事業報告、計算書類)を取締役会で決議しなければならない旨が定められています。

(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
(略)
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)
第三百一条 取締役は、第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この款において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
(略)

(計算書類等の監査等)
第四百三十六条 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人
二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)
3 取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。

(計算書類等の作成及び保存)
第四百三十五条
(略)
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

会社法

金融商品取引法の書類

金融商品取引法上も、会社法上も、明確には、金融商品取引法の書類(有価証券報告書、四半期報告書等)は、取締役会の決議を求められていません。

金融商品取引法
会社法

取引所規則の書類

取引所規則上も、金融商品取引法上も、会社法上も、明確には、取引所規則の書類(決算短信、四半期決算短信等)は、取締役会の決議を求められていません。
なお、当記事では、東京証券取引所に上場している会社を想定しています。

有価証券上場規程(東京証券取引所)
金融商品取引法
会社法

社則の定め(社内規程の定め)

次に、社則(会社により、社内規程等ともいいます。以下「社則」で統一します。)の定めを確認しましょう。

社則のうち、まず、取締役会規程(会社により、取締役会規則等ともいいます。以下「取締役会規程」で統一します。)を確認してみてください。
有価証券報告書や決算短信を取締役会で決議している場合は、取締役会規程にその旨が記載してあるはずです。

社則のうち、次に、決裁規程(会社により、決裁権限規程、決裁基準規程等ともいいます。以下「決裁規程」で統一します。)を確認してみてください。
有価証券報告書や決算短信を取締役会で決議していない場合は、決裁規程に「社長が決裁する。」または「総務管掌役員(総務担当役員、IR管掌役員、IR担当役員)が決裁する。」といった旨が記載してあるはずです。

有価証券報告書や決算短信を取締役会で決議している会社は、会社法に定める取締役会の決議事項のうち、その他の重要な業務執行の決定に該当していると判断しているものと思われます。
着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。

(取締役会の権限等)
第三百六十二条
(略)
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
(略)

会社法

まとめ

有価証券報告書や決算短信の取締役会決議は法令上は不要です。
社内の手続きとして取締役会決議が必要か否かは、社則(社内規程)を確認しましょう。

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