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取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。

投稿日:2020年6月15日 更新日:

新型コロナウイルス感染症に関する株式総務関連情報まとめ」でもご紹介しましたとおり、取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める、というニュースがありましたが、その内容についてご存知でしょうか。

当記事では、電子署名とは何か、電子署名の種類(方式)、法律上認められる電子署名とは何か、取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認めるとはどういった意味があるのか、ご説明します。




取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。

電子署名とは?

電子署名とは、一般的に、電磁的記録(電子データ)に記録することができる情報について行われる措置で、署名又は記名押印に代わるものをいいます。

電子署名の種類(方式)は?

電子署名の種類は、大きく分けて、以下の3種類があると言われています。

カード型、カード署名型、ローカル署名型

符号(署名鍵)を格納する物件(ICカード)を保有する本人が、ICカードをカードリーダーにて読み取り、電子署名を実行するもの。

リモート型、リモート署名型

離れた場所からクラウド上で本人が符号(署名鍵)を用い、電子署名を実行するもの(サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し、利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの。)。

クラウド型、クラウド署名型

クラウド上で電子署名をするが第三者が代行するもの(サービス提供事業者(電子契約事業者)が利用者の指示を受けて電子署名を行うもの。)。

法律上、認められる電子署名の種類は?

これまではいずれの方式も電子署名ではあるものの、本人(取締役会議事録への電子署名で言えば取締役本人)の電子署名として認められるのは、カード型のみとされてきました(クラウド型はサービス提供事業者の電子署名と整理される。)。

実務側としては、非寛容で頭が固く柔軟でないと言いたくもなりますが、以下に引用する法律(電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条)を文字通り読めば、その通りだろうという気がします(着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。)。

2020年5月22日開催の規制改革推進会議第11回成長戦略ワーキング・グループに提出した「論点に対する回答」という法務省提出資料でも、同様の見解が示されていました。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

電子署名及び認証業務に関する法律

以下の論点について、下記回答欄にご回答ください。
(1)
登記申請時添付すべき契約書面や取締役会議議事録等について、電子署名による押印では認められず、取り扱いを拒否される事例に悩まされる企業が多いとの声がある。
① 会社法第 369 条第4項において、取締役会の議事録が電磁的記録で作成されている場合は、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとることとされ、また、当該措置については会社法施行規則第225 条において、「電子署名及び認証業務に関する法律」第2条第1項と同様の文言で「電子署名」が定められている。これは、電子の取締役会の議事録については、サーバ上で自らの署名鍵で電子署名を行う所謂「リモート署名」及び、電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスの両方について、署名又は記名押印に代わる措置と解されるということか。

(略)

【回 答】
(1)
① 取締役会の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には,法律上,出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならないこととされているが(会社法(平成17年法律第86号)第369条第4項),省令において,その措置は電子署名の方法によるものとされている(会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第225条第1項第6号)。当該電子署名の要件としては,電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号。以下「電子署名法」という。)第2条に規定する電子署名の要件と同じ要件が定められており(会社法施行規則第225条第2項),その範囲は電子署名法における電子署名の範囲と同様に解される。
電子署名法の解釈として,御指摘のいわゆる「リモート署名」又は「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」であっても,電子署名法第2条第1項各号の要件を満たすものについては,同条に規定する「電子署名」に該当するものであると解される。ただし,この場合であっても,「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」は,電子契約事業者が自ら電子署名を行うサービスであって,当該サービスによる電子署名は,電子契約事業者の電子署名であると整理される。このように整理される場合には,出席した取締役又は監査役が「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」を利用して電磁的記録をもって作成された取締役会の議事録に電子署名をしても,当該電子署名は取締役等の電子署名ではないこととなり,会社法第369条第4項の署名又は記名押印に代わる措置としては認められないこととなると考えられる。

論点に対する回答(法務省提出資料)

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。

ところが、上記の回答の約1週間後(2020年5月29日)に、まったく異なる見解が、法務省より日本経済団体連合会(経団連)など、主な経済団体へ示されたと報道されました。
これまで認められていなかったリモート署名・クラウド署名を有効と認めるものです。

取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に(日経新聞)

【法務省の見解】

会社法上、取締役会に出席した取締役及び監査役は、当該取締役会の議事録に署名又は記名押印をしなければならないこととされています(会社法第369条第3項)。また、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には、署名又は記名押印に代わる措置として、電子署名をすることとされています(同条第4項、会社法施行規則第225条第1項第6号、第2項)。
当該措置は、取締役会に出席した取締役又は監査役が、取締役会の議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって、いわゆるリモート署名(注)やサービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても、取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして、当該取締役会の議事録について、その意思に基づいて当該措置がとられていれば、署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると考えられます。

(注)サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し、利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの

取締役会議事録に施す電子署名についての法務省見解(一般社団法人新経済連盟)

(追記)5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?

法務省の発表を丁寧に読むと、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められたようにも思えます。

詳細は、「取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?」をご参照ください。

会社法及び関連法令の定め

最後に、参考までに、取締役会議事録の電子署名に関する会社法及び関連法令の定めを引用します。

(取締役会の決議)
第三百六十九条
(略)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
(略)

会社法

(電子署名)
第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
(略)
六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)
(略)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

会社法施行規則

登記

登記については「取締役会議事録のリモート型電子署名・クラウド型電子署名の登記は認められる?」をご参照ください。

まとめ

これまで認められていなかったリモート署名・クラウド署名が、法務省により、有効と認められました。

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