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取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?

投稿日:2020年6月17日 更新日:

取締役会議事録の電子署名について、以下の2件の記事を書きました。

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。
取締役会議事録のリモート型電子署名・クラウド型電子署名の登記は認められる?

リモート型電子署名とクラウド型電子署名は、同時に認められたように思っていましたが、
法務省の発表を丁寧に読むと、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められたように思いました。

実務上の意味はあまりないかもしれませんが、記事にしてみました。




取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?

電子署名の種類(リモート型電子署名とは?クラウド型電子署名とは?)

電子署名の種類については、「取締役会議事録の電子署名としてリモート型署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。」をご参照ください。

2020年5月22日より前の状況

2020年5月12日に行われた内閣府規制改革推進会議第10回成長戦略ワーキンググループに出席し電子契約普及のための法改正に関する提言を行った日本組織内弁護士協会および弁護士ドットコム株式会社(クラウド型電子署名サービスであるクラウドサインを提供)の以下の発表を読むと、この提言時点で、リモート型電子署名も、クラウド型電子署名も、認められていないという前提であることがわかります。

規制改革推進会議に出席(当会初)し、電子署名法(2000年)の改正提言を行いました―書面・押印から電子契約へ―(日本組織内弁護士協会)

「デジタルファースト」を加速するための電子署名法・商業登記法等の規制緩和の必要性(サインのリ・デザイン(弁護士ドットコム株式会社))

2020年5月22日付け「論点に対する回答」(法務省提出資料)

2020年5月22日開催の規制改革推進会議第11回成長戦略ワーキング・グループに提出した
「論点に対する回答」という法務省提出資料を再確認します。

どうも、この時点でリモート署名は認められているように読めるのですがいかがでしょうか
(着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。)。

以下の論点について、下記回答欄にご回答ください。
(1)
登記申請時添付すべき契約書面や取締役会議議事録等について、電子署名による押印では認められず、取り扱いを拒否される事例に悩まされる企業が多いとの声がある。
① 会社法第 369 条第4項において、取締役会の議事録が電磁的記録で作成されている場合は、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとることとされ、また、当該措置については会社法施行規則第225 条において、「電子署名及び認証業務に関する法律」第2条第1項と同様の文言で「電子署名」が定められている。これは、電子の取締役会の議事録については、サーバ上で自らの署名鍵で電子署名を行う所謂「リモート署名」及び、電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスの両方について、署名又は記名押印に代わる措置と解されるということか。
② 登記申請時に添付すべき契約書面や取締役会議事録について、①に記載した2つの方法による電子署名を認めるべきではないか。

(略)

【回 答】
(1)
① 取締役会の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には,法律上,出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならないこととされているが(会社法(平成17年法律第86号)第369条第4項),省令において,その措置は電子署名の方法によるものとされている(会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第225条第1項第6号)。当該電子署名の要件としては,電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号。以下「電子署名法」という。)第2条に規定する電子署名の要件と同じ要件が定められており(会社法施行規則第2
25条第2項),その範囲は電子署名法における電子署名の範囲と同様に解される。
電子署名法の解釈として,御指摘のいわゆる「リモート署名」又は「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」であっても,電子署名法第2条第1項各号の要件を満たすものについては,同条に規定する「電子署名」に該当するものであると解される。ただし,この場合であっても,「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」は,電子契約事業者が自ら電子署名を行うサービスであって,当該サービスによる電子署名は,電子契約事業者の電子署名であると整理される。このように整理される場合には,出席した取締役又は監査役が「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」を利用して電磁的記録をもって作成された取締役会の議事録に電子署名をしても,当該電子署名は取締役等の電子署名ではないこととなり,会社法第369条第4項の署名又は記名押印に代わる措置としては認められないこととなると考えられる。
② 登記の申請の際に添付すべき定款,議事録若しくは最終の貸借対照表又は他の書面が電磁的記録で作られているときは,登記の真実性を確保する観点から,当該電磁的記録には,作成者の「電子署名」につき一定の方法によることを求める(注1)とともに,作成者が電子署名の措置を講じたものであることを確認するための情報として一定の要件を満たす「電子証明書」を求める(注2)こととしている。
御指摘のいわゆる「リモート署名」について,当該署名に係る電子認証の仕組みが構築されているなど,上記の要件を満たしている場合には,登記の申請に添付すべき書面に係る情報に講ずる電子署名として認められることとなる。一方,「電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」については,①のとおり電子契約事業者が自ら電子署名を行うサービスであることから,作成者の電子署名がないものとして,登記の申請に添付すべき書面に係る情報に講ずる電子署名の要件を満たさないものと考えられる。
(注1)電子署名の方法としては,電磁的記録に記録することができる情報に,産業標準化法(昭和24年法律第185条)に基づく日本産業規格X5731-8の付属書Dに適合する方法であって同付属書に定めるnの長さの値が2048ビットであるものを講ずることとされている(商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)第33条の4)。
(注2)電子署名に使用することができる電子証明書は,委任による代理権限を証する情報にあっては,①電子認証登記所の電子証明書又は②氏名,住所,出生の年月日等により本人性を確認することができるものとして法務大臣の指定する電子証明書であり,その他の添付書面に係る情報にあっては,上記①及び②の電子証明書のほか,③指定公証人の電子証明書又は④その他法務大臣の指定する電子証明書とされている(商業登記規則第36条第4項)。

論点に対する回答(法務省提出資料)

2020年5月29日付け「法務省の見解」

2020年5月29日に、法務省より日本経済団体連合会(経団連)など、主な経済団体へ示された見解を読むと、リモート型電子署名・クラウド型電子署名のどちらも認められたことが、はっきりとわかります。

【法務省の見解】

会社法上、取締役会に出席した取締役及び監査役は、当該取締役会の議事録に署名又は記名押印をしなければならないこととされています(会社法第369条第3項)。また、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には、署名又は記名押印に代わる措置として、電子署名をすることとされています(同条第4項、会社法施行規則第225条第1項第6号、第2項)。
当該措置は、取締役会に出席した取締役又は監査役が、取締役会の議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって、いわゆるリモート署名(注)やサービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても、取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして、当該取締役会の議事録について、その意思に基づいて当該措置がとられていれば、署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると考えられます。

(注)サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し、利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの

取締役会議事録に施す電子署名についての法務省見解(一般社団法人新経済連盟)

報道

2020年5月29日付け「法務省の見解」を受けての報道を確認してみます。

日本経済新聞(日経新聞)は、「認めるのは「リモート型」や「クラウド型」と呼ばれる方式だ。」と報道しています。
一方で、時事通信は「法務省は今回、新たにクラウド型も認めることにした。」と報道しています。

時系列(時事通信が後追いで報道。)的にも、日経新聞の報道を受けて、時事通信が法務省へ裏取り(法務省としては5/22にリモート型は認めていたということを確認。)をして後追いで報道したと考えれば、辻褄が合うのでは?という気がしてきます。

取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に(2020/5/31付日本経済新聞 朝刊)(日本経済新聞)

クラウド署名、政府が容認 取締役会の議事録承認(2020年06月01日17時16分)(時事通信)

まとめ

取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた、かもしれません。
実務的には、どちらも認められたのでこれからの各サービスに期待するだけなのですが、少し気になって記事にしてみました。

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。
取締役会議事録のリモート型電子署名・クラウド型電子署名の登記は認められる?

上記の記事もご参照ください。

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火星に似たもの

職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。