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電子署名された取締役会議事録の電子データとしての保存は可能?

投稿日:2020年6月18日 更新日:

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認めましたが、その保存方法について、電子データのまま保存できるのか、疑問に思った方もおられるかと思います。

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。
取締役会議事録のリモート型電子署名・クラウド型電子署名の登記は認められる?
取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?

当記事では、取締役会議事録を含む会社法上の保存義務がある書類(株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、計算書類、事業報告、等。)について、電子データのまま保存できるのか、また関係する法律であるe-文書法と電子帳簿保存法の違いについて、ご説明します。




電子署名された取締役会議事録の電子データとしての保存は可能?

電子署名された取締役会議事録の電子データとしての保存は可能!

結論から言うと、取締役会議事録を含む会社法上の保存義務がある書類(株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、計算書類、事業報告、等。)を電子データとして保存することは可能です。
以下に、その理由をご説明します。

e-文書法とは?(電子文書法とは?)

e-文書法とは、2005年4月1日より施行された、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通則法)と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)という、二つの法律の総称です。
電子文書法とも呼称されています。

e-文書法は、民間事業者等が法令(会社法を含みます。)で義務付けられている書面(紙)による保存に代わり、電磁的記録(電子データのことです。)による保存を行うことを認める法律となっています。

電子署名を施された取締役会議事録のような、元々、電子データとして作成された文書だけではなく書面(紙)をスキャンした電子データによる保存も認められています。

整備法とは?

整備法とは、新たな法律の施行等に伴って関係法律の改正が行われる場合で、既存の数多くの法律の改正が必要となる場合に、定められる法律です。

会社法が制定された際も、その整備法である「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が同時に制定されています。

参議院法制局の「整備法と整理法」という記事でわかりやすく解説されています。

なお、当記事に限って言えば、会社法の施行(2006年5月1日)は、e-文書法の施行より(2005年4月1日)より後になりますので、整備法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)は無視してしまって問題ありません。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、国税関係帳簿書類の保存方法を定めた法律です。

電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類については、e-文書法の規定は適用しない、とされており、国税関係帳簿書類を電子データとして保存するには、所轄税務署長の承認等の要件を満たす必要があります。

会社法上の保存義務がある書類(株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、計算書類、事業報告、等。)に関しては、「会計帳簿及びその事業に関する重要な資料」が国税関係帳簿書類と重複する可能性があります。

保存する書類が、国税関係帳簿書類に該当し、かつ国税関係帳簿書類を電子データとして保存する電子帳簿保存法上の要件を満たしていない場合には、書面(紙)により保存しましょう。

法令上の定め

ここまでご説明した内容に関する法令を以下に引用します(着色は当サイト「株式総務」の運営者によるものです。)。

(電磁的記録による保存)
第三条 民間事業者等は、保存のうち当該保存に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うことができる

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律

第二節 情報通信の技術の利用

(定義)
第二百三十一条 この節において使用する用語は、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十六年法律第百四十九号。以下この節において「電子文書法」という。)において使用する用語の例による。

(保存の指定)
第二百三十二条 電子文書法第三条第一項の主務省令で定める保存は、次に掲げる保存とする。
一 法第七十四条第六項(法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定による代理権を証明する書面の保存
二 法第七十五条第三項(法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定による議決権行使書面(法第七十条第一項に規定する議決権行使書面をいう。)の保存
三 法第八十一条第二項(法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定による創立総会の議事録の保存
四 法第八十二条第二項(法第八十六条において準用する場合を含む。)の規定による法第八十二条第一項の書面の保存
五 法第百七十三条の二第二項の規定による同条第一項の書面の保存
六 法第百七十九条の十第二項の規定による同条第一項の書面の保存
七 法第百八十二条の六第二項の規定による同条第一項の書面の保存
八 法第三百十条第六項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による代理権を証明する書面の保存
九 法第三百十一条第三項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による議決権行使書面(法第三百一条第一項に規定する議決権行使書面をいう。)の保存
十 法第三百十八条第二項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による株主総会の議事録の保存
十一 法第三百十八条第三項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による株主総会の議事録の写しの保存
十二 法第三百十九条第二項(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による法第三百十九条第一項の書面の保存
十三 法第三百七十一条第一項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)の規定による議事録等の保存
十四 法第三百七十八条第一項第一号の規定による計算書類、その附属明細書又は会計参与報告の保存
十五 法第三百七十八条第一項第二号の規定による臨時計算書類及び会計参与報告の保存
十六 法第三百九十四条第一項の規定による監査役会の議事録の保存
十七 法第三百九十九条の十一第一項の規定による監査等委員会の議事録の保存
十八 法第四百十三条第一項の規定による指名委員会等の議事録の保存
十九 法第四百三十二条第二項の規定による会計帳簿及び資料の保存
二十 法第四百三十五条第四項の規定による計算書類及びその附属明細書の保存
二十一 法第四百四十二条第一項の規定による計算書類等の保存
二十二 法第四百四十二条第二項の規定による計算書類等の写しの保存
二十三 法第四百九十二条第四項の規定による財産目録等の保存
二十四 法第四百九十四条第三項の規定による貸借対照表及びその附属明細書の保存
二十五 法第四百九十六条第一項の規定による貸借対照表等の保存
二十六 法第五百八条第一項及び第三項の規定による帳簿資料の保存
二十七 法第六百十五条第二項の規定による会計帳簿の保存
二十八 法第六百十七条第四項の規定による計算書類の保存
二十九 法第六百七十二条第一項、第二項又は第四項の規定による帳簿資料の保存
三十 法第七百三十一条第二項の規定による社債権者集会の議事録の保存
三十一 法第七百九十一条第二項の規定による同条第一項の書面の保存
三十二 法第八百一条第三項の規定による同項各号に定める書面の保存
三十三 法第八百十一条第二項の規定による同条第一項の書面の保存
三十四 法第八百十五条第三項の規定による同項各号に定める書面の保存

(保存の方法)
第二百三十三条 民間事業者等が電子文書法第三条第一項の規定に基づき、前条各号に掲げる保存に代えて当該保存すべき書面に係る電磁的記録の保存を行う場合には、当該書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録を民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルにより保存する方法により行わなければならない。
2 民間事業者等が前項の規定による電磁的記録の保存を行う場合には、必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で、その使用に係る電子計算機その他の機器に表示することができるための措置及び書面を作成することができるための措置を講じなければならない。

会社法施行規則

(議事録等)
第三百七十一条 取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。

(取締役会の決議)
(略)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

(会計帳簿の作成及び保存)
第四百三十二条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない

会社法

(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の適用除外)
第九条の二 国税関係帳簿書類については、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十六年法律第百四十九号)第三条(電磁的記録による保存)及び第四条(電磁的記録による作成)の規定は、適用しない

(他の国税に関する法律の規定の適用)
第十一条 第四条各項又は第五条各項のいずれかの承認を受けている国税関係帳簿書類に係る電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムに対する他の国税に関する法律の規定の適用については、当該電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムを当該国税関係帳簿書類とみなす
(略)

国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等
第四条 保存義務者は、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長(財務省令で定める場合にあっては、納税地等の所轄税関長。以下「所轄税務署長等」という。)の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該承認を受けた国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合であって、所轄税務署長等の承認を受けたときは、財務省令で定めるところにより、当該承認を受けた国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該承認を受けた国税関係書類の保存に代えることができる。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律

まとめ

取締役会議事録を含む会社法上の保存義務がある書類(株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、計算書類、事業報告、等。)について、電子データとして保存することは可能です。

ただし、会計帳簿など、国税関係帳簿書類に該当する可能性があるものは、注意が必要です。

取締役会議事録の電子署名としてリモート型電子署名・クラウド型電子署名を法務省が認める。
取締役会議事録のリモート型電子署名・クラウド型電子署名の登記は認められる?
取締役会議事録の電子署名は、5/22にリモート型電子署名が、5/29にクラウド型電子署名が法務省より認められた?

上記記事もご参照ください。

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職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
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