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電子公告を採用した場合の公告方法の登記に関する注意点(URLの記載)

投稿日:2020年6月9日 更新日:

公告方法として電子公告を採用した場合、公告方法の登記の際に、「不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」を登記しなければならない、とされています。
「不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」が何を指すかご存じでしょうか?

また、電子公告を採用している会社に勤務されている方で、自社の定款と登記事項証明書で公告方法(公告をする方法)の記載が少し異なることが気になっている方もいるかもしれません。

当記事では、「不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」や、電子公告を採用した場合の定款と登記事項証明書における公告方法(公告をする方法)の記載の差異について、法令をもとに、確認したいと思います。

公告とは?公告の方法は?何種類ある?
電子公告とは?電子公告調査とは?調査機関の調べ方は?
上場会社の決算公告は必要?不要?決算公告とは?
決算公告の電子公告調査は必要?不要?

公告については上記の記事もご参照ください。

なお、当サイト「株式総務」は、株式会社を想定した記事を作成しております。
株式会社とは別の社団法人の記事を検索している方には、お役に立てず、申し訳ありません。




電子公告を採用した場合の公告方法の登記に関する注意点(URLの記載)

法令の確認

まず、法令の定めを確認しましょう。

(株式会社の設立の登記)
第九百十一条 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
(略)
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(略)
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十八 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め

(変更の登記)
第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

(計算書類の公告)
第四百四十条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。

(会社の公告方法)
第九百三十九条 会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三 電子公告
(略)
3 会社又は外国会社が第一項第三号に掲げる方法を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。この場合においては、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、同項第一号又は第二号に掲げる方法のいずれかを定めることができる。

会社法

第二百二十条 次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるものは、当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるものとする。
一 法第九百十一条第三項第二十六号 法第四百四十条第三項の規定による措置
二 法第九百十一条第三項第二十八号イ 株式会社が行う電子公告
(略)
2 法第九百十一条第三項第二十八号に規定する場合には、同号イに掲げる事項であって、決算公告(法第四百四十条第一項の規定による公告をいう。以下この項において同じ。)の内容である情報の提供を受けるためのものを、当該事項であって決算公告以外の公告の内容である情報の提供を受けるためのものと別に登記することができる。

会社法施行規則

「不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」とは?

上記で引用した法令のうち、
「不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの」、
「次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるもの」、
「当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるもの」の3点は、
同じものを指しています。

ただ、非常にわかりづらいですね。

要するに、電子公告を掲載するウェブサイトのURLのことを指しています。

定款と登記事項証明書における公告方法(公告をする方法)の記載の差異

上記で引用した法令に規定する通り、電子公告を採用した場合、定款には公告方法だけ定めればよいのですが、登記の際は、公告方法だけではなく、「当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるもの」、すなわち、電子公告を掲載するウェブサイトのURLも登記する必要があります。

そのため、定款と登記事項証明書における公告方法(公告をする方法)の記載に差異が生じます。

まとめ

電子公告を採用した場合、電子公告を掲載するウェブサイトのURLについて、定款には規定する必要はありませんが、登記をする必要がありますので、ご注意ください。

公告とは?公告の方法は?何種類ある?
電子公告とは?電子公告調査とは?調査機関の調べ方は?
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公告については上記の記事もご参照ください。

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名前:
火星に似たもの

職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。