株式会社において、「社員」とは誰を指すのでしょうか?
法(成文法に限りません。以下同じです。)における概念として「社団」というものがあり、その構成員を「社員」といいます。
一方で、会社に雇用されている労働者のことを、一般的に「社員」ということもあります。
当記事では、法の上で、株式会社において、「社員」とは誰を指すか、説明したいと思います。
目次
株式会社の社員は株主!
株式会社は社団法人のひとつ
法の上で、株式会社は「社団法人」の一つに数えられます。
「社団法人」とは何か、「法人」と「社団」に分けて、次に説明します。
法の上での人とは?
法の上では、自然人(生物としてのヒト。)と法人を、「人」といいます。
法的人格(権利義務の主体となることができる資格(権利能力))が認められます。
法人とは?
法人とは、自然人以外で、権利義務の主体となることができる資格(権利能力)を付与された人をいいます。
法人には、公法人(国や地方公共団体など)と私法人(会社、宗教法人、学校法人、政党、NPO法人など)に分けられます。
社団とは?
社団とは、一定の目的を持つ人の集団体をいいます。
会社、宗教法人などがあります。
社団の構成員のことを、一般的に「社員」といいます。
なお、一定の目的のために拠出された財産の集合を財団といいます。
学校法人などがあります。
社団法人とは?
上記の社団と法人の両方の定義に当てはまるものですので、
権利義務の主体となることができる資格(権利能力)を付与された一定の目的を持つ人の集団体を、社団法人といいます。
一方で、権利能力がない(つまり、法的人格がない。)社団を、権利能力なき社団(人格なき社団)といいます。
社団法人と社員の具体例
社団の構成員のことを、一般的に「社員」という、と書きましたが、法律ごとに、各社団法人の社員の呼称について、確認したいと思います。
株式会社の中にいると自覚がありませんが、こうして比較すると、社員を株主と呼称することのほうが、よっぽど例外的な事象であるということがよく分かります。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律における一般社団法人の社員は「社員」と規定されています。
弁護士法における弁護士法人の社員は「社員」と規定されています。
公認会計士法における監査法人の社員は「社員」と規定されています。
保険業法における相互会社の社員は「社員」と規定されています。
医療法における社団たる医療法人の社員は「社員」と規定されています。
日本赤十字社法における日本赤十字社の社員は「社員」と規定されています。
特定非営利活動促進法(NPO法)における特定非営利活動法人(NPO法人)の社員は「社員」と規定されています。
健康保険法における健康保険組合の社員は「組合員」と規定されています。
農業協同組合法における農業協同組合の社員は「組合員」と規定されています。
水産業協同組合法における漁業協同組合の社員は「組合員」と規定されています。
消費生活協同組合法における消費生活協同組合の社員は「組合員」と規定されています。
労働組合法における労働組合の社員は「組合員」と規定されています。
労働金庫法における労働金庫の社員は「会員」と規定されています。
商工会議所法における商工会議所の社員は「会員」と規定されています。
金融商品取引法における自主規制法人の社員は「会員」と規定されています。
地方自治法における認可地縁団体(法人格を得た自治会・町内会)の社員は「構成員」と規定されています。
建物の区分所有等に関する法律(マンション法)における管理組合法人の社員は「区分所有者」と規定されています。
地方独立行政法人法における地方独立行政法人の社員は「設立団体(地方独立行政法人を設立する一又は二以上の地方公共団体)」と規定されています。
投資信託及び投資法人に関する法律における投資法人の社員は「投資主」と規定されています。
会社法における持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)の社員は「社員」と規定されています。
会社法における株式会社の社員は「株主」と規定されています。
会社の被雇用者(労働者、従業員)は?
会社法における株式会社の社員(社団の構成員としての社員。)は株主であることはわかりました。
一方で、通俗的に、会社の被雇用者を指して社員と呼称することもありますが、会社法上はどのような言葉が使われているのでしょうか?
会社法では「使用人」という言葉が用いられており、その定義はされていないのですが、一般的には会社の被雇用者を指すとされています。
医療法、特定非営利活動促進法、健康保険法、日本赤十字法、労働金庫法、地方独立行政法人法及び商工会議所法では「職員」という言葉が、
消費生活協同組合法では「従業員」という言葉が、当該法律に定める社団法人の被雇用者を指す言葉として用いられています。
金融商品取引法において、有価証券報告書の「従業員の状況」欄にて、被雇用者の状況の記載が求められますが、「使用人の状況」としていないのは有価証券報告書の提出者が、会社法における会社に限らないため、被雇用者を指す一般的な言葉として「従業員」という言葉を用いているものと思われます。
有価証券報告書の「従業員の状況」の従業員の定義については、「有価証券報告書の年収の算出方法を法令を明示して解説!残業代は含まれる?」もご参照ください。
なお、労働基準法では、「労働者」という言葉が用いられています。
まとめ
会社法における株式会社の社員(社団の構成員としての社員。)は株主!
会社法における会社の被雇用者(通俗的に社員と呼称される労働者。)は使用人!