「監査報告書の種類は?全部でいくつある?決算短信には不要?」をご覧いただいた際、「会社法上は監査法人(会計監査人)による事業報告の監査が不要で、金融商品取引法上は監査法人による有価証券報告書の非財務情報部分の監査も不要みたいだけど、うちの会社の監査法人はそれらの書類もみているかも。」とお思いになったかもしれません。
(有価証券報告書の非財務情報については、「有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)」もご参照ください。)
当記事では、監査法人による事業報告や有価証券報告書(非財務情報部分)の監査の必要性について、確認したいと思います。
目次
監査法人(会計監査人)による事業報告や有価証券報告書(非財務情報部分)の監査は不要?
不要です!
結論としては、監査法人(会計監査人)による事業報告や有価証券報告書(非財務情報部分)の監査は不要です。
法令で求められていません。具体的な法令については、「監査報告書の種類は?全部でいくつある?決算短信には不要?」をご参照ください。
(法令には、原則的には、監査が必要なものしか定められていないため、分かりづらいかもしれません。)
旧商法では監査の対象だった。
2005年(平成17年)の会社法制定前の旧商法では、一定の条件を満たす会社は、事業報告の前身に当たる「営業報告書」について、会計監査人の監査が必要でした。
第二百八十一条 取締役ハ毎決算期ニ左ニ掲グルモノ及其ノ附属明細書ヲ作リ取締役会ノ承認ヲ受クルコトヲ要ス
一 貸借対照表
二 損益計算書
三 営業報告書
四 利益ノ処分又ハ損失ノ処理ニ関スル議案
(略)第二百八十一条ノ二 取締役ハ定時総会ノ会日ヨリ七週間前ニ前条第一項各号ニ掲グルモノヲ監査役ニ提出スルコトヲ要ス
(略)第二百八十一条ノ三 監査役ハ前条第一項ノ規定ニ依リ第二百八十一条第一項各号ニ掲グルモノヲ受領シタル日ヨリ四週間内ニ監査報告書ヲ取締役ニ提出スルコトヲ要ス
2 前項ノ監査報告書ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
(略)
六 営業報告書ガ法令及定款ニ従ヒ会社ノ状況ヲ正シク示シタルモノナルヤ否ヤ
(略)
九 第二百八十一条第一項ノ附属明細書ニ記載スベキ事項ノ記載ナク又ハ不実ノ記載若ハ会計帳簿、貸借対照表、損益計算書若ハ営業報告書ノ記載若ハ記録ト合致セザル記載アルトキハ其ノ旨
(略)商法(会社法制定前)
(会計監査人の監査)
第二条 大会社(清算中のものを除く。)は、この節に定めるところにより、商法第二百八十一条第一項に掲げるもの(同項第三号に掲げるもの及びその附属明細書については、会計に関する部分に限る。)について、監査役の監査のほか、会計監査人の監査を受けなければならない。商法(会社法制定前)
監査法人が事業報告や有価証券報告書(非財務情報部分)の事前確認を希望する理由
法令上、不要であるにもかかわらず、監査法人が事業報告や有価証券報告書(非財務情報部分)を、開示前(発送前、提出前)の確認を希望する理由としては、会計(計算書類、財務諸表)に関連する部分の整合性であったり、監査法人(会計監査人)について記載されている部分を、確認したいためと思います。
まとめ
会社法上、監査法人(会計監査人)による事業報告の監査は不要です!
また、金融商品取引法上、監査法人による有価証券報告書の非財務情報部分の監査は不要です!
監査報告書の種類は?全部でいくつある?決算短信には不要?
監査役による計算書類や連結計算書類の監査は不要?
有価証券報告書の前段とは?(非財務情報とは?)
上記の記事もぜひご参照ください。