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会社(大会社、上場会社)と企業(大企業、上場企業)の違いは?どっちで呼ぶ?

投稿日:2020年5月29日 更新日:

「上場会社」「上場企業」のどちらで呼ぶのが正しいのでしょうか?

当サイト「株式総務」は上場会社の「株式に関する総務の業務」を解説しているウェブサイトですので、閲覧いただいている方は上場会社の勤務の方が多いかもしれません。

そのため、会社法・金融商品取引法・証券取引所規則等の観点から、「上場会社」「上場企業」のどちらで呼ぶのが正しいのか、会社や企業という言葉の定義について、ご説明をいたします。




会社(大会社、上場会社)と企業(大企業、上場企業)の違いは?

会社の定義、企業の定義

会社の定義については、会社法に定められていますので、明確です。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。

会社法

企業の定義については、法令上の定めはありません。
Wikipedia(企業 – Wikipedia)などでは、会社に加え、会社以外の法人(独立行政法人、学校法人など)や(税法上の)個人事業主なども、その範囲に含んでいます。

参考として、中小企業基本法の「中小企業者」の定義においても、「会社及び個人」とされています。

企業という語は会社を含みより広い範囲を定義するものである、という認識は、法令上も共有されていることがわかります。

(中小企業者の範囲及び用語の定義)
第二条 この法律に基づいて講ずる国の施策の対象とする中小企業者は、おおむね次の各号に掲げるものとし、その範囲は、これらの施策が次条の基本理念の実現を図るため効率的に実施されるように施策ごとに定めるものとする。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの

中小企業基本法

大会社の定義、大企業の定義

大会社の定義については、会社法に定められていますので、明確です。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。

会社法

大企業の定義については、法令上の定めはありません。
ただ、「中小企業基本法の「中小企業者」の定義以上の規模の企業」が大企業とはいえそうです。

(中小企業者の範囲及び用語の定義)
第二条 この法律に基づいて講ずる国の施策の対象とする中小企業者は、おおむね次の各号に掲げるものとし、その範囲は、これらの施策が次条の基本理念の実現を図るため効率的に実施されるように施策ごとに定めるものとする。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの

中小企業基本法

上場会社の定義、上場企業の定義

上場会社の定義について、東京証券取引所を例として確認します。
東京証券取引所の有価証券上場規程では以下の通り、定められております(わかりやすいように順番を一部改変しています。)。

上場会社とは、「上場株券等の発行者」とされており、「上場株券等の発行者」には、会社法上の会社以外の法人(投資法人や信金中央金庫など)も含まれます。

上場企業の定義については、法令や取引所規則上の定めはありません。
一般的には、上場会社と同じ対象を指していると思われます。
上記の通り、上場会社には、会社法上の会社以外の法人(投資法人や信金中央金庫など)も含まれますので、「会社の定義、企業の定義」に記載したように、企業という言葉に会社法上の会社以外の法人も含むという考え方で言えば、上場企業という言い方も正しいのかもしれません。

(定義)
第2条
この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(50) 上場会社 上場株券等の発行者をいう。

(51) 上場株券等 当取引所に上場している株券等をいう。

(17) 株券等 内国株券等又は外国株券等をいう。

(79) 内国株券等 内国株券又は優先出資証券をいう。

(92) 優先出資証券 優先出資法に規定する優先出資証券をいう。

(58) 上場内国株券等 上場内国株券又は上場優先出資証券をいう。

(57) 上場内国株券 当取引所に上場している内国株券をいう。

(61) 上場優先出資証券 当取引所に上場している優先出資証券をいう。

(7) 外国株券等 外国株券又は外国株預託証券等をいう。

(6) 外国株券 法第2条第1項第17号に掲げる有価証券のうち同項第9号に掲げる株券の性質を有するものをいう。

(12) 外国株預託証券等 外国株預託証券又は外国株信託受益証券をいう。

(11) 外国株預託証券 法第2条第1項第20号に掲げる有価証券で外国株券に係る権利を表示するものをいう。

(10) 外国株信託受益証券 施行令第2条の3第3号に規定する有価証券信託受益証券のうち、受託有価証券(施行令第2条の3第3号に規定する受託有価証券をいう。以下同じ。)が外国株券であるものをいう。

(46) 上場外国株券等 上場外国株券又は上場外国株預託証券等をいう。

(45) 上場外国株券 当取引所に上場している外国株券をいう。

(49) 上場外国株預託証券等 上場外国株預託証券又は上場外国株信託受益証券をいう。

(47) 上場外国株信託受益証券 当取引所に上場している外国株信託受益証券をいう。

(48) 上場外国株預託証券 当取引所に上場している外国株預託証券をいう。

有価証券上場規程(東京証券取引所)

まとめ

法令上の会社の定義はありますが、法令上の企業の定義はありません。
法令上の大会社の定義はありますが、法令上の大企業の定義はありません。
取引所規則上の上場会社の定義はありますが、法令や取引所規則上の上場企業の定義はありません。
上場企業ではなく、上場会社と呼びましょう!

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名前:
火星に似たもの

職業:
とある会社で株式総務を担当しています。
株式総務に関するウェブサイトが少ないな、あると便利なのにな、と思い、拙くも開設してみました。