実印(印鑑提出印、印鑑登録印)とシャチハタ(スタンプ印、インキ浸透印)はどちらが効力があるのでしょうか?
結論からいえば、効力は全く変わりません。効力は同じです。
ではなぜ、重要な書類では実印が求められるのでしょうか?
当記事では、実印(印鑑提出印、印鑑登録印)とシャチハタ(スタンプ印、インキ浸透印)の有効性(効力)が変わらないことについて、ご説明します。
目次
実印とシャチハタの有効性(効力)は変わらない。
実印とは?
実印とは、会社の代表者印(丸印)のうち、登記所へ印鑑(印影)を提出したもの(登録されたもの。)です。
詳しくは、「実印とは?認印との違いは?(法人、会社、株式会社)」をご参照ください。
シャチハタとは?
シャチハタとは、スタンプ印(インキ浸透印)の通称であり、シヤチハタ株式会社の商品「Xスタンパー」が市場に広く流通しているため、通称となっています。
株式総務における押印
当サイト「株式総務」は、株式に関する総務の業務(以下「株式総務」といいます。)を解説するウェブサイトですが、株式総務を行う中でも、押印が必要となる場合があるのではと思います。
例えば、会社法では、取締役会議事録について、以下の通り定められています。。
(取締役会の決議)
第三百六十九条
(略)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
(略)
実印とシャチハタの有効性(効力)は変わらない。
では、取締役会議事録へ記名押印する場合に、実印では有効なように思いますが、シャチハタでは無効なのでしょうか?
シャチハタではない認印では無効なのでしょうか?
結論からいえば、いずれも有効です。
押印の有効性については、「二段の推定」という用語があります。
「二段の推定」については、「取締役会議事録の押印が本人の意思による押印と推定される理由(二段の推定)」もご参照ください。
実印とシャチハタの信頼性は異なる。
実印とシャチハタの有効性(効力)は変わらないのに、なぜ、重要な書類では、実印が求められるのでしょうか?
取締役会議事録を代表取締役変更登記の添付書類として用いる場合も、以下に引用する法令の通り、代表者印は、実印であることが求められます。
(代表取締役が再任の場合等を想定しています。)
重要な書類で、実印が求められる理由は、その押印の有効性ではなく、信頼性です。
シャチハタは、複製可能性も高く、盗用される可能性もあります。
一方で、実印は、一般的に(手彫り印専門店(はんこ屋さん)等で作成しているため)複製可能性は低く、一般的に(厳重な管理をすることから)盗用される可能性も低いです。
そのため、実印は信頼性が高く、上記の「二段の推定」の「一段目の推定」が崩される可能性が非常に低いです。
言い換えれば、押印したことについて当事者が言い逃れができない(押印したのが自分でないとは言えない。)のです。
(添付書面の通則)
第四十六条
(略)
2 登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。
(略)
(添付書面)
第六十一条
(略)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
(略)
まとめ
重要な書類で、シャチハタ(スタンプ印、インキ浸透印)ではなく、実印(印鑑提出印、印鑑登録印)が求められる理由は、有効性(効力)ではなく、信頼性です!