有価証券報告書の記載内容について、信じていいの?信憑性はあるの?虚偽(嘘)は無いの?と気になる方もおられると思います。
現実に虚偽記載が発生していますので、虚偽(嘘)は無いとは言えませんが、信憑性を担保するために虚偽記載には罰則等があります。
当記事では、有価証券報告書の虚偽記載の罰則等をご紹介したいと思います。
目次
有価証券報告書の虚偽記載の罰則等
虚偽記載の罰則等の分類
虚偽記載の罰則等として、金融商品取引法に基づく、民事責任・行政責任・刑事責任があり、東京証券取引所の有価証券上場規程に基づく、上場廃止があります。
(当記事では、東京証券取引所に上場している会社を想定しています。)
金融商品取引法
民事責任(損害賠償)
虚偽記載があった場合、提出会社及び提出会社の役員は、「記載が虚偽であることにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。」とされています。
(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)
第二十一条の二 第二十五条第一項各号(第五号及び第九号を除く。)に掲げる書類(以下この条において「書類」という。)のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該書類の提出者は、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されている間に当該書類(同項第十二号に掲げる書類を除く。)の提出者又は当該書類(同号に掲げる書類に限る。)の提出者を親会社等(第二十四条の七第一項に規定する親会社等をいう。)とする者が発行者である有価証券を募集若しくは売出しによらないで取得した者又は処分した者に対し、第十九条第一項の規定の例により算出した額を超えない限度において、記載が虚偽であり、又は欠けていること(以下この条において「虚偽記載等」という。)により生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者又は処分した者がその取得又は処分の際虚偽記載等を知つていたときは、この限りでない。(有価証券届出書等の公衆縦覧)
第二十五条
(略)
四 有価証券報告書及びその添付書類並びにこれらの訂正報告書 五年(虚偽記載のある有価証券報告書の提出会社の役員等の賠償責任)
第二十四条の四 第二十二条の規定は、有価証券報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合について準用する。この場合において、同条第一項中「有価証券を募集若しくは売出しによらないで取得した者」とあるのは、「有価証券を取得した者」と読み替えるものとする。(虚偽記載等のある届出書の提出会社の役員等の賠償責任)
第二十二条 有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、第二十一条第一項第一号及び第三号に掲げる者は、当該記載が虚偽であり、又は欠けていることを知らないで、当該有価証券届出書の届出者が発行者である有価証券を募集若しくは売出しによらないで取得した者又は処分した者に対し、記載が虚偽であり、又は欠けていることにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。
行政責任(課徴金)
600万円(時価総額の10万分の6が600万円を超えるときはその額。)の課徴金を国庫に納付することを命じられることとなります。
(虚偽記載のある有価証券報告書等を提出した発行者等に対する課徴金納付命令)
第百七十二条の四 発行者が、重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている有価証券報告書等(第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十四条第六項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書及びその添付書類又は第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項の規定による訂正報告書をいう。以下この章において同じ。)を提出したときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、第一号に掲げる額(第二号に掲げる額が第一号に掲げる額を超えるときは、第二号に掲げる額)に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、発行者の事業年度が一年である場合以外の場合においては、当該額に当該事業年度の月数を十二で除して得た数を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
一 六百万円
二 イに掲げる額にロに掲げる数を乗じて得た額
イ 当該発行者が発行する算定基準有価証券(株券、優先出資法に規定する優先出資証券その他これらに準ずるものとして政令で定める有価証券をいう。以下この号及び第百七十二条の十一第一項において同じ。)の内閣府令で定めるところにより算出される市場価額の総額(当該算定基準有価証券の市場価額がないとき又は当該発行者が算定基準有価証券を発行していないときは、これに相当するものとして政令で定めるところにより算出した額)
ロ 十万分の六
刑事責任(刑事罰)
「10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する。」とされています。
また、その違反行為をした行為者が、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者であるときは、行為者への罰則だけでなく、両罰規定として、法人に対して「7億円以下の罰金刑」が科されます。
第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第五条(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出書類(第五条第四項の規定の適用を受ける届出書の場合には、当該届出書に係る参照書類を含む。)、第七条第一項、第九条第一項若しくは第十条第一項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による訂正届出書(当該訂正届出書に係る参照書類を含む。)、第二十三条の三第一項及び第二項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による発行登録書(当該発行登録書に係る参照書類を含む。)及びその添付書類、第二十三条の四、第二十三条の九第一項若しくは第二十三条の十第一項の規定若しくは同条第五項において準用する同条第一項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による訂正発行登録書(当該訂正発行登録書に係る参照書類を含む。)、第二十三条の八第一項及び第五項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による発行登録追補書類(当該発行登録追補書類に係る参照書類を含む。)及びその添付書類又は第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十七条において準用する場合を含む。)若しくは第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書若しくはその訂正報告書であつて、重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者
東京証券取引所の有価証券上場規程
上場廃止
会社が虚偽記載をし、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき、上場を廃止するものとする、とされています。
(上場内国会社の上場廃止基準)
第601条
本則市場の上場内国株券等が次の各号のいずれかに該当する場合には、その上場を廃止するものとする。この場合における当該各号の取扱いは施行規則で定める。
(略)
(11) 虚偽記載又は不適正意見等
第501条第1項第2号に該当する場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき(特設注意市場銘柄の指定及び指定解除)
第501条
当取引所は、次の各号に掲げる場合であって、かつ、当該上場会社の内部管理体制等について改善の必要性が高いと認めるときは、当該上場会社が発行者である上場株券等を特設注意市場銘柄に指定することができる。
(略)
(2) 次のa又はbに該当する場合
a 上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合
まとめ
有価証券報告書の虚偽記載の罰則等についてご理解いただけたでしょうか。
実際に罰則等が適用される事例も発生しているので、十分とは言えないのかもしれませんが、当サイト「株式総務」運営者を含む有価証券報告書の作成者は、こういった罰則等を認識の上、有価証券報告書を作成しています。
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