当記事では、株主総会招集通知(参考書類、事業報告、計算書類)の虚偽記載の罰則等についてご説明します。
有価証券報告書の虚偽記載については「有価証券報告書の信憑性(虚偽記載の罰則等)」をご参照ください。
目次
株主総会招集通知(参考書類、事業報告、計算書類)の虚偽記載の罰則等
構成される書類ごとに罰則等が異なる。
株主総会招集通知はいくつかの書類で構成されていますが、その書類ごとに罰則が異なります。
株主総会招集通知を構成する各書類については「株主総会招集通知の構成」をご参照ください。
虚偽記載の罰則等の分類
虚偽記載の罰則等として、会社法(及び民法。)に基づく、民事責任・罰則(過料)がありり、また、有価証券報告書提出会社の場合は、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)等に基づく罰則が科される場合があります。
会社法
民事責任(損害賠償)
会社法における特別の責任規定
会社法においては、以下のとおり、株主総会招集通知の中では、計算書類・事業報告・監査報告の虚偽記載が損害賠償責任の対象として定められています。
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
民法・会社法における一般の責任規定
会社法における定めは上記の通りですが、株主総会招集通知の計算書類・事業報告・監査報告以外の書類(狭義の招集通知・株主総会参考書類・連結計算書類)に虚偽記載があっていいというわけではなく、狭義の招集通知・株主総会参考書類・連結計算書類の虚偽記載についても、民法及び会社法における一般的な不法行為責任(損害賠償責任)を追うことになると考えられます。
会社法と民法の関係については「会社法は民法の特別法!金商法の一般法は?」をご参照ください。
(代表者の行為についての損害賠償責任)
第三百五十条 株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
罰則(過料)
百万円以下の過料に処されます。
なお、過料は刑事罰ではありません(秩序罰といわれています。)。
刑法や刑事訴訟法ではなく、一般的に非訟事件手続法に基づき、手続きがなされます。
(過料に処すべき行為)
第九百七十六条 発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
(略)
七 定款、株主名簿、株券喪失登録簿、新株予約権原簿、社債原簿、議事録、財産目録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書、事業報告、事務報告、第四百三十五条第二項若しくは第四百九十四条第一項の附属明細書、会計参与報告、監査報告、会計監査報告、決算報告又は第百二十二条第一項、第百四十九条第一項、第百七十一条の二第一項、第百七十三条の二第一項、第百七十九条の五第一項、第百七十九条の十第一項、第百八十二条の二第一項、第百八十二条の六第一項、第二百五十条第一項、第二百七十条第一項、第六百八十二条第一項、第六百九十五条第一項、第七百八十二条第一項、第七百九十一条第一項、第七百九十四条第一項、第八百一条第一項若しくは第二項、第八百三条第一項、第八百十一条第一項若しくは第八百十五条第一項若しくは第二項の書面若しくは電磁的記録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
第五編 過料事件
(管轄裁判所)
第百十九条 過料事件(過料についての裁判の手続に係る非訟事件をいう。)は、他の法令に特別の定めがある場合を除き、当事者(過料の裁判がされた場合において、その裁判を受ける者となる者をいう。以下この編において同じ。)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。。
刑事罰や課徴金はない。
有価証券報告書の虚偽記載における金商法の定めと違い、刑事罰や課徴金はありません。
金融商品取引法等
有価証券報告書提出会社は、有価証券報告書の添付書類として、計算書類及び事業報告を提出します。
添付書類を含む有価証券報告書の虚偽記載がある場合、金商法等に定める罰則等を課される場合があります。
詳細は「有価証券報告書の信憑性(虚偽記載の罰則等)」をご参照ください。
(有価証券報告書の提出)
第二十四条
(略)
6 有価証券報告書には、定款その他の書類で公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定めるものを添付しなければならない。。
(有価証券報告書の添付書類)
第十七条 法第二十四条第六項(法第二十七条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により有価証券報告書に添付すべき書類として内閣府令で定めるものは、次の各号に掲げる有価証券の発行者の区分に応じ、当該各号に定める書類とする。ただし、第一号イ若しくはハからヘまで又は第二号ホに掲げる書類(以下この条において「定款等」という。)については、定款等を添付して提出することとされている有価証券報告書の提出日前五年以内に法第二十四条第六項の規定により添付して提出されたもの(以下この条において「前添付書類」という。)がある場合には、定款等と前添付書類とで異なる内容の部分とする。
一 内国会社 次に掲げる書類
(略)
ロ 当該事業年度に係る会社法第四百三十八条第一項に掲げるもので、定時株主総会に報告したもの又はその承認を受けたもの(有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合には、定時株主総会に報告しようとするもの又はその承認を受けようとするもの)(内国法人である指定法人にあつては、これらに準ずるもの)
(略)
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第四百三十八条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
一 第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三 取締役会設置会社 第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四 前三号に掲げるもの以外の株式会社 第四百三十五条第二項の計算書類及び事業報告
まとめ
株主総会招集通知の虚偽記載の罰則等についてご理解いただけたでしょうか。
「有価証券報告書の信憑性(虚偽記載の罰則等)」もご参照ください。